派遣会社のマージン率は開示の義務あり|マージン率について詳しく解説
- 「派遣会社のマージン率ってなに?」
- 「マージン率は低い方がいいの?」
- 「派遣会社のマージン率を知りたい!」
派遣会社にマージン率があるのは知っているけど「よくわからない」という人も多いのではないでしょうか。
派遣会社のホームページを見るとマージン率を公開している派遣会社は多いですが、派遣登録にも影響するマージン率を公開しているのには理由があります。
派遣会社はマージン率を開示する義務があります。
なぜなら、労働者派遣法(派遣法23条5項)で定められているからですね。
厚生労働省はマージン率の公開方法を次のように定めています。
(参照元:厚生労働省マージン率等の情報提供について)
さらに、令和3年4月1日からインターネット等でのマージン率開示が原則とされています。
ただ、マージン率が開示されたとしても、そもそも何なのかよくわからない人もいるのではないでしょうか。
そこで当記事では、
- マージン率とはなにか
- マージン率の計算方法
- 大手派遣会社のマージン率
を紹介していきます。
この記事を読み終わる頃には、マージン率のことを理解できて、派遣会社を選ぶ際の判断基準のひとつとなっていることでしょう。
「マージン」とは派遣料金から派遣社員の給料を引いた額
マージン率を説明する前に、「マージン」そのものについて説明します。
マージンとは、派遣会社が得ている取り分のことで、派遣先企業が派遣会社へ支払う料金である「派遣料金」から「派遣社員の賃金」を差し引いた額です。
わかりにくいので図で説明します。
上記の図を式で表すと以下のようになります。
まだわかりにくいと思うので、厚生労働省が発表している「平成30年度労働者派遣事業報告書の集計結果」から、実際の数字をあてはめて計算してみます。
・派遣労働者の賃金(8時間換算)(平均) 14,888円
23,044-14,888=8,156
平均マージンは8,156円となります。
つまり、派遣先企業が派遣会社に支払っている23,044円のうち、派遣会社には8,156円が入っているわけですね。
派遣社員には派遣料金の金額も明示される
派遣先企業が派遣会社に支払う料金である「派遣料金」は、派遣社員にも明示されます。
平成24年10月1日より施行されている労働者派遣法で定められているからですね。
派遣料金が派遣社員に明示されるタイミングは以下の通りです。
- 派遣会社と労働契約を締結するとき
- 派遣先に実際に派遣されるとき
- 派遣料金が変更になったとき
(参照元:厚生労働省「派遣労働者・労働者の皆様」)
上記のタイミングで派遣社員は、書面かFAX・Eメールのいずれかの方法で派遣料金を教えてもらえます。
ただし、教えてもらえる派遣料金は、派遣料金の平均額である場合もあります。
マージン率はマージンが派遣料金の何%かを表したもの
マージン率は、マージンの金額が派遣料金のどれくらいの割合を占めているかを表したものです。
マージン率は次の計算式で出されます。
前の項と同じく、「平成30年度労働者派遣事業報告書の集計結果」からマージン率も計算してみましょう。
・派遣料金の平均額 23,044円
・派遣労働者の平均賃金 14,888円
(23,044-14,888)÷23,044=35.39
マージン率は35.3%となります。
注意点として、マージン率は派遣会社によって異なります。
さらには、同じ派遣会社でも支店ごとにマージン率は違うので、登録する際には、支店ごとのマージン率を確認するようにしましょう。
また、案件によってもマージン率は異なります。
公開されているマージン率は平均なので、「計算したけど給料と合わない」場合もあると覚えておきましょう。
マージン率=派遣会社の利益ではない
- 「マージン率が低い派遣会社の方がお給料はいいのかな?」
- 「マージン率の高い派遣会社はピンハネしてる?」
- 「マージン率はすべて派遣会社の利益になってるいるの?」
マージン率が低い派遣会社は、派遣社員への賃金割合が高くなるため、良心的なイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
一方で、マージン率の高い派遣会社は「ぼったくりなのではないか?」と不満を感じる人もいるかもしれませんが、マージン率が高いからといって、マージン率のすべてが派遣会社の利益にはなりません。
マージン率には以下のように社会保険料など、福利厚生の費用も含まれているからですね。
- 派遣労働者の社会保険料
- 派遣労働者の有給休暇費用
- 研修・教育費、福利厚生費
- その他諸経費(募集費・システム代など)
- 営業利益
たとえば、派遣社員が有給休暇を取得した際には、派遣会社が有給休暇分のお給料を派遣社員に支払っています。
また、パソコンや英語などのスキルアップ費用も派遣会社のマージン内に含まれています。
つまり、「マージン率が高い」から「ぼったくり」とは一概に言えません。
厚生労働省の資料にも、次の一文が入っています。
・マージンには、福利厚生費や教育訓練費なども含まれていますので、マージン率は低いほどよいというわけではなく、その他の情報と組み合わせて総合的に評価することが重要です。
(参考:厚生労働省「派遣労働者・労働者の皆様」)
「どれぐらい福利厚生などに当てているか」は、派遣会社に違いますが、マージン率の平均は20%~30%となっています。
マージン率の高い派遣会社に登録する際は、福利厚生がマージン率と見合っているのかを確認するようにしましょう。
派遣料金のうち営業利益は1.2%
- 「派遣会社はどれくらいの利益を得ているのだろう」
マージン率のすべてが派遣会社の利益にならないことは述べたとおりですが、実際の利益率が気になる人も多いのではないでしょうか。
日本人材派遣協会が公開している、派遣料金の内訳は次のとおりです。
内訳 | 割合 |
---|---|
派遣社員の賃金 | 70% |
社会保険料 | 10.9% |
派遣社員の有給休暇費用 | 4.2% |
その他の諸費用 | 13.7% |
営業利益 | 1.2% |
上記の割合を「平成30年度労働者派遣事業報告書の集計結果」の派遣料金23,044円にあてはめてそれぞれの金額を出してみました。
内訳 | 金額 |
---|---|
派遣社員の賃金 | 16,131円(70%) |
社会保険料 | 2,512円(10.9%) |
派遣社員の有給休暇費用 | 968円(4.2%) |
その他の諸費用 | 3,157円(13.7%) |
営業利益 | 276円(1.2%) |
派遣先企業が派遣会社へ支払う23,044円のうち、営業利益になっているのは276円でした。
具体的な数字を見ると、派遣会社の利益は少ないのがわかりますよね。
大手派遣会社6社のマージン率ランキング一覧
実際に派遣会社のマージン率を知りたい人も多いのではないでしょうか。
そこで、2019年度の大手派遣会社6社の平均マージン率をランキング形式で紹介しますね。
今回は派遣社員が多い東京都の中でも中心エリアである「新宿支店」のマージン率を比較してみました。(リクルートスタッフィングのみ新宿に支店をもっていないため、銀座にある本社のマージン率となっています。)
なお、1日8時間あたりの平均派遣料金と派遣社員の平均賃金額も合わせて掲載しているので、参考にしてください。
派遣会社名 | マージン率 | 平均派遣料金 | 平均賃金額 | |
---|---|---|---|---|
1 | パソナ | 28.4% | 22,479円 | 16,080円 |
2 | スタッフサービス | 29.5% | 17,760円 | 12,525円 |
3 | マンパワーグループ | 29.7% | 20,256円 | 14,234円 |
4 | リクルートスタッフィング | 30.0% | 20,128円 | 14,086円 |
5 | テンプスタッフ | 30.2% | 18,744円 | 13,080円 |
6 | アデコ | 33.9% | 19,409円 | 12,822円 |
大手派遣会社6社のマージン率は、28%~34%でした。
派遣先企業が派遣会社に支払う派遣料金が高ければ、マージン率が高くても派遣社員に支払われる給料は低くなるのを抑えられるのがわかります。
上記の表を見ると、パソナはマージン率が一番低く、派遣料金と平均賃金は一番高いです。
パソナは利用者満足度の高い派遣会社のひとつと言われています。
なぜなら、2020年月刊人材ビジネスによる第34回「派遣スタッフ満足度調査」で「この派遣会社を友人に勧める口コミ」第一位の実績を持っています。
口コミ以外で「マージン率」の部分においても、リードしていると言えますね。
また、パソナだけでなく大手派遣会社は、一社だけでも登録しておいて損はありません。
大企業ならではの信頼、実績、福利厚生が取り揃えられているためですね。
まとめ
マージン率には、
- 派遣労働者の社会保険料
- 派遣労働者の有給休暇費用
- 研修・教育費、福利厚生費
- その他諸経費(募集費・システム代など)
- 営業利益
が含まれています。
マージン率が低いから善良な派遣会社、高いからピンハネしている悪徳な派遣会社というわけではありません。
ただし、マージン率が高くて福利厚生が大したことない派遣会社は、おすすめできません。
マージン率の一点のみで派遣会社を選ぶのはおすすめできませんが、派遣会社に登録する際、確認しておいて損はないでしょう。
もし派遣会社のマージン率を調べても見つからない場合は、派遣会社のサポートセンターやカウンセラーに聞いてみてください。
マージン率は開示の義務があるため、教えてくれない派遣会社は登録を控えましょう。
澁谷・坂東法律事務所
坂東大士(ばんどう ひろし)氏
(大阪弁護士会 登録番号 47642)
経歴
2009年 関西大学法科大学院 卒業
2011年 司法試験 合格
2013年 大阪弁護士会登録
2019年 澁谷・坂東法律事務所開設
所属団体
大阪弁護士会労働問題特別委員会
租税訴訟学会
関西圏国家戦略特区雇用労働相談センター雇用労働相談員(2015年度)
東大阪商工会議所会員
弁護士の視点から当記事が法的に問題ないかをチェックしていただいております。